超硬タガネの昔と現在~スチール柄(SS400)タガネの試作試し彫り

私が彫りを学んだ80年代は、おそらく赤タガネと超硬タガネの切り変りの頃でした
祖父は知りませんが、叔母も赤タガネでしたので祖父も同じかと思います
当時、中央宝石研究所に研修生として入学のため東京にアパート借りましたので
合わせて日本宝飾クラフトの夜学の彫留彫刻にも入門して彫りも学びました

当時購入した超硬タガネになりますが、柄は全てスチールでした
3種類ありますが、2本以外は同じ物になります
最初に購入したのが、ロウがてんこ盛りの状態でして
同期の研修生にも自作したんですか?と聞かれるくらいの物でした
2本目が今思うと珍しいのですが、ロウ目のところに段差がありません
当時1本3000円でして、刃先も研がれてる物ではありませんでした
残りのタガネは全部同じになります
おそらく今の量産品の前進のタガネではないかと思います

少しづつ値段が下がりましたので、店頭でもこれしか見かけなくなりました
今と違うのはロウ付けが単なるV字カットで、柄もスチールで角がある平鋼でした
それにしても超硬は当時の倍額にはなってるのに、現在のタガネ相場は1/3と売価がおかしいですね

1本3000円ほどで購入後は同期の研修生との折半で100本ロットのオール超硬の資材を購入
流石に50本は使いきれなかったので、彫金を止めた後、市販のタガネの研ぎの外注仕事後に
残りはヤフオクで売った次第です

余談が長くなりましたが、柄の違いについてお話しします
超硬タガネに関しては、刃先のサイズに関係なく柄は一緒です
赤タガネや青タガネはサイズ別に長さも太さも違います
私もこれまでは刃先のサイズに関係なく柄は一緒ですが
少しロウ付け部分をサイズに合わせてテーパーに切削してます
これは釣り竿にも似た事が言えますが、少しでもサイズ毎に継ぎの部分の力を柄に逃がすためです

また超硬をテーパーで市販品より長くしてるのは、超硬部分が細いとしなりが出ます
当所のSUS柄は市販品よりも5×3ミリと少し太いために柄の段を少なくして
なおかつ超硬を長くしてるのは、そのためです
これも釣り竿の原理と同じく、短くて細いチップに継ぎの部分の段差が大きいと
力の逃げ場が少ないため折れやすくなります
チップと柄の材質が違うために、柄を追求すると厳密には赤タガネや青タガネ以上に柄の材質の選択や形状は難しい問題になるかと思います

超硬の場合ですと、大体1ミリ以上は彫りの際にしなりは殆ど感じません
ですが、大体0.5ミリ以下の極細になると破損のリスクが高くなりますのでSS400を柄に試作しました

これは柄がオタフク槌の力を吸収して、刃先の破損し難くするためです
車で例えるなら、ショックアブソーバーの役割を柄に持たせます
釣り竿のように、刃先から柄までしなるために破損し難くなると言えます

動画でも字幕で書いてますが、彫りは0.4ミリの毛彫りで下書きなしで彫ってます


やはり柄にもしなり感がありますが、折れる不安感は薄いです
このように市販のSUSの柄のタガネ使った事がありませんが
SSの柄には少しスチールの柄の懐かしさも感じました
特に極細のタガネには有り有りだと思います

私がこの超硬タガネ開発の頃には、この柄の部分も大きかったです
SUS、S45C、真鍮や赤タガネの柄も試験的に製作した次第でした
当所のSUS柄は5×3ミリですが、こちらSS柄は4×2ミリと厚みと幅も1ミリ細くなります
これは超硬のサイズ別に柄も目的に合わせて変えるという目論見です
SS400は柔らかいためにヤスリで削る事も簡単なので、ロウ付け部分をテーパーに削る事も簡単になります

タガネは研ぎの部分が最も大きいのですが、使い手の技量や慣れの部分も大きいです
基本的には自分でタガネを研ぐという事が一番大事です
また、伝統の赤タガネや青タガネの形状や材質も無視する事は出来ません
必ずしも超硬の方がいいと言ってる訳ではありません
今もなお赤タガネしか使わない人には、それなりの理由があるからだと思ってます

スチール柄のバリエーション追加の際にはこれ以外にもメリットとデメリットがありますので後に記事にしますが、0.5ミリ以下の極細専用のタガネになるかと思います

しかしSS柄の4×2ミリの平鋼は規格サイズでないために単なる普通鋼でありながら素材として高価です
今後の入手にも不安がありますが、バリエーション追加として製作します

コメント